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子どもの不正咬合の治療方法とデメリット

不正咬合治療は、子どもの頃に開始した方が良いと言われています。こちらでは、子どもの不正咬合治療の治療方法やデメリットについてご紹介しましょう。

子どもの噛み合わせ治療は年齢によって異なる

大人の噛み合わせ治療と言えば、ワイヤーなどの矯正器具を歯に装着して、歯が動くのを待つとう治療が一般的です。ですが、まだ乳歯が残っている子どもの場合は、この治療の前段階として行われる治療があります。

小学生や中学生など、まだ完全に永久歯に生え変わっていない子どもの場合は、年齢に合わせた不正咬合治療を行うこととなり、それぞれ「I期治療」「II期治療」と呼ばれています。

I期治療について

I期治療が行われるのは、まだ乳歯が残っている子どもの場合で、年齢すると15歳前後までです。この頃の子どもは成長段階にあるため、I期治療によって、骨格からの改善を行うことが可能。I期治療で用いられる矯正器具は、主に次の3種類です。

バイオネーター

口の中に入れて装着するタイプ。ワイヤーとプラスチックでできており、下顎が小さすぎる場合、その成長を促進させるために使われます。

ヘッドギア

頭にかぶる、もしくは首にバンドで巻いて装着し、側面から出るバーを歯に装着して骨格を整えるタイプ。骨格的に上顎が出すぎている場合に使われます。

チンキャップ

頭にかぶって下顎部分を支えるタイプ。ヘッドギアとは反対に、下顎が出すぎている場合に用いられ、下顎の成長をストップさせる、成長方向を変化させるなどの効果があります。

顎の位置や形に不正咬合の原因がある場合は、このように、I期用の矯正器具を用います。I期治療を行って、正常に歯が生え変わるようなら、II期治療を必要としないこともあるでしょう[1]。

II期治療について

II期治療は大人の不正咬合治療と同様で、マルチブラケットと呼ばれる矯正器具を装着して行う治療です。年齢的には、全ての歯が永久歯に生え変わる15歳以上から。

I期治療を行った後、生え変わった歯が正常に映えてこなかった場合、II期治療が行われます[1]。

II期治療で用いられる器具は様々で、従来通りのワイヤータイプ、ワイヤーを歯の裏側に着けるタイプ、マウスピースタイプなどが代表的です。

表面にワイヤーを装着するタイプ

金属のワイヤーを歯の表面につけ、ワイヤーの弾力によって歯の位置を整える治療法。

透明のワイヤーも存在します。

裏側にワイヤーを装着するタイプ

歯の裏側にワイヤーを装着するので、外見的に目立たず、誰にも知られず不正咬合治療を進めることも可能です。

マウスピースタイプ

透明のマウスピースを歯に装着する治療法です。取外しが可能なので手軽で、外見的に目立たないというメリットがあります。

II期治療ではこれらの矯正器具の中から、子どもの希望や状況に応じて選択し、最終的な歯並びを整えていきます。

骨格性の不正咬合の場合

I期治療やII期治療で改善できないような、大きな骨格性不正咬合の場合は、顎の骨を切断して顎の位置を変えるなど、外科的な治療が行われることもあります。

このような外科的な治療が必要な不正咬合は、「顎変形症」と呼ばれるもので、医院によっては、保険診療の対象となる場合もあります。

不正咬合治療は子どもの頃に済ませておくべき?

人によっては、噛み合わせ治療は大人になってからでも良い、と考える人もいるようです。確かに大人になってからII期治療だけで噛み合わせ治療を行うこともできますが、子どもの頃に治療を済ませることのメリットもあります。

I期治療で根本的な治療が行える

大人になって成長が止まってしまってからでは、I期治療のような根本的な骨格の治療は行えません。下顎や上顎の不正が重度であった場合、子どもの頃に治療をしておかなければ、骨を削るような大きな手術が必要になることもあります。

子どもの場合でも骨格の手術を行うことはありますが、子どもの頃の方がその確率は低くなり、結果的に子どもの体にかかる負担と、治療費を軽減させられることもメリットです。

また、顎が極端に小さい場合は、バイオネーターで顎の大きさを整えてないと、将来的に健康な歯の抜歯が必要になる可能性もあります。

長期的な管理が必要な不正咬合もある

不正咬合の種類としては様々な状態がありますが、中には長期的な管理が必要なため、子どもの頃から治療を始めなければならない不正咬合も存在するのです。

しかし,不正咬合の種類によっては,早期からの治療や長期的な管理が必要な場合もあり,歯科医師は保護者に対して情報提供をさらに行い,不正咬合の状態を把握させるよう啓発する必要があると考えられた。

出典:小児歯科学雑誌『(PDF)小児の不正咬合に関する意識調査ー乳歯列期についてー』

こちらの論文によると、実際に小児期から不正咬合治療を始める保護者は少ないそうですが、年齢を重ねたときに自分の歯を残しておくためにも、不正咬合の治療は大切です。

論文に記載されているように、保護者がしっかりと管理しておくことが、長期的な歯の健康につながります。

不正咬合治療のデメリットについて

体や心が未発達である子どもの頃に不正咬合治療を行うことには、デメリットも存在します。これらのデメリットを避けるためには、技術力の高い医院を選択することと、子どもに不正咬合治療の必要性を理解してもらうことが大切でしょう。

I期治療・II期治療の場合

  • 歯の周辺組織が傷つく
  • 治療期間が長くなる

矯正器具などを使った非外科矯正の場合は、歯を機能的な位置に移動させることが治療目的となるため、その治療をやり過ぎてしまえば、歯の周辺組織が傷ついてしまうリスクも存在します。

そして、矯正器具による噛み合わせ治療は、期間が長くなることが特徴的です。およそ1年もの間矯正器具を装着して、医院に通院しなければならないというストレスがあるので、子どもにも治療に対する理解を得なければなりません[2]。

外科的治療の場合

  • 全身麻酔をする必要があること
  • 顎骨の位置が変化する
  • 顔が変わってしまう

手術で使われる全身麻酔は呼吸が止まる場合もある麻酔なので、侵襲性が高いというデメリットがあります。また、骨格を削るような外科矯正を行った場合は、顔の形すらも変わってしまう可能性があり、子どもが変化した顔を受け入れられないというリスクが存在します。

医師は、顎骨の位置変化や、顔の変化が起こらないように気をつけて治療をしますが、技術的な限界もあるようです[2]。そのため、子どものメンタル面に対する配慮なども必要でしょう。

[1]

参考:厚生労働省 e-ヘルスネット『不正咬合の治療法の概要』

[2]

参考:Dental Medicine Research『(PDF)テンポラリーアンカレッジデバイスを用いた下顎大臼歯遠心移動により治療を行った過蓋咬合を伴うAngle Cl.III前歯反対咬合症例』